313.部長日記(第16話)

真我日記

部長との面談の前日にこんなことがあった。
私の代わりをやってくれる後輩のSさんから夜遅く私の携帯に電話がかかってきたのだ。

S「もしもし、近藤さんですか?」

私「Sさん?どうしたの?」

S「私、近藤さんの代わりをやっていく自信がないんです。会社で電話がかかってきてもまだ何のこと言ってるかわかってないからとりつぐのが精一杯だし、私が仕事が出来てないから、周りの人はみんな私が仕事出来てないと影で言っているような気がします。それと今日、部長と課長が私が仕事が出来てないから近藤さんの前に生産管理にいた女性に帰ってきてもらおうかと影でひそひそ話をしているのが聞こえてきたんです。やっぱり私なんかいない方がいいんじゃないでしょうか?その女性が帰ってきた方が会社のためにも良いんじゃないかって。だったら私が会社にいる意味があるのかなって。こんなこと近藤さんにしか相談出来なくて・・・。私どうしたら良いか・・・?」というのだ。

私は一通り話を聞いて、業務や電話はまだ慣れてないから少しずつわかってくるから大丈夫だよ、と伝えて周りの人が影でSさんのことをそう言ってるなんて考え過ぎだよ、と言った。そして部長と課長の話は真実がわからないので、私の代わりはSさんしかいないから大丈夫だよ、だから余計な心配はしないで業務に専念してね。と伝えて彼女が落ち着くまで話をして電話を切った。

しかし、真実かどうかわからないが部長と課長の話していた内容に私は腹を立てた。真実ではないにしてもSさんをそんな不安がらせるような話をしていた部長に無性に腹が立った。
次の日、私はどうしてもこの話を部長にしなければ!という思いで会社に出社した。

〜ここで昨日の面談に話を戻します〜

私「三つ目はSさん(引き継ぎしてる後輩)のことです。彼女は一生懸命仕事やってるんです。自分で家で業務の流れをファイルにまとめたり、一週間の流れを書いてきたり、業務の内容の意味がわからないところは私に聞いてわかろうとして、すごく前向きに頑張ってるんです。そのSさんが私に昨日電話をかけてきてこう言ったんです・・・。」

その後、私は昨日Sさんと電話で話した内容を全て部長に打ち明けた。

私「・・〜!、それなのに部長と課長は何ですか!昨日、私の前にいた女性に帰ってきてもらおうか、と話してるのを彼女が耳にしたんですよ!彼女は一生懸命やってるんですよ!訳のわからない情報をSさんの耳に入れて彼女を不安にさせるのはやめてください!!どういうことなんですか!!」

Sさんの前日の電話の話しを聞いてすっかり怒り心頭の私は真実かどうかもわからない情報を部長に、感情に任せて思い切りぶつけていた。

部長「そうか。Sさんがそんなことを言ってたのか。私と課長がそんな話しをしてたって?そうかわかった。近藤さんそれを伝えてくれてありがとう。でもね、ただこの話をSさんに部長に話しておいたよ、と言ってはダメだよ。何でかわかるか?」

私がポカンとしていると、

部長「彼女は近藤さんを信頼してこの話をしたんだ。それを私に話したって言ったら彼女ショックを受けるだろう。守秘義務っていうのがあるだろう。近藤さんこれからカウンセラーをやるんだったらそこが一番大事なことなんじゃないの。全くもう。そんなんで4月から大丈夫なのか?」

私「あ!そうか!」

私はカッとなり怒り心頭のあまり大事なことを忘れていた。

部長「感情に任せていろんな大事なこと忘れてしまっていただろう。本当に近藤さんはそういうとこだぞ。しっかりしてくれよ。」

私「おっしゃる通りです。」
返す言葉も無かった。

部長の方が私より一枚も二枚も人間的にもカウンセラーとしても上手だった。

部長「近藤さんへの私から最後のプレゼントだ。これから話すのは仕事のことだぞ。それはSさんの不安を取り除くこと。それには業務の反復練習だな。それから、ずっとそればかりだと疲れるからたまにはファイル業務とか単純な仕事もさせてあげて力を抜けることをさせてあげるとか。その辺は近藤さん臨機応変にな。わかったか?私からの最後のプレゼント受け取ってくれるか。」

私「はい、わかりました!」

部長「プレゼントをどう処理するか、見ものだな。楽しみにしてるぞ。」

私「はい。かしこまりました!」

部長と課長と話していたことが真実かどうかはわからないが一番大事なことは何か部長の方が良くわかっていた。それはSさんの不安を取り除くことだ。

私は部長から最後のプレゼントをいただいた。全力でそれをやり切ることそれが私のお世話になった会社への最大の恩返しになるのではないか。

(最終話へ続く)