佐藤康行の言葉をお伝えします。著者生き方教室より
経営では、売り上げ目標などある程度数値目標を立てるのが一般的である。
ところが、逆に計画を立てないで、どんどんやっていく方が良いとの考え方もある。
計画を立てる必要がある場合と、立てない方が良い場合のどちらもあるのだ。
例えば、セールスマンが物を売りに行っているときに、自分の懐具合ばかり計算して物を売ったら、相手に気づかれてかえって売れなくなってしまう。
それに、仮に売れたとしても、お客さんがよい気持ちにならない可能性がある。
だから、いっそ、そういう計算は抜きにして、自分の商品を通してお客さんに役立つことだけを真剣に考える。
お客さんから、「このセールスマンはいい人だな。よくやってくれるな」と思われれば、注文を頂くことができるし、それが売り上げ増加につながる。
その結果が数値として現れてくるであろう。
お客さんとのやり取りの過程、実際に何を行ったらいいかという事実に目を向けて、その結果を見る。
また、数字をどう捉えるのかということも大事なことである。
まずは数字を前にして目標を決めるのである。
数字は、「私はどれだけお客さんに奉仕します」「お客さんに喜んでもらいます」「お客さんに理解してもらいます」そして「この商品を愛している」「会社も愛している」「お客さんを愛しているから、これを使っていただきたい」ということの宣言でもあるのである。
ただ、単純に月給を取る、というのではなく、自分の意欲やお客さんに喜んでもらった結果が、月給の数値として現れてくるのである。
たくさんのお客さんに喜んでいただくという、愛の結晶が数字として現れるのだから、逆に考えると愛をどれだけ出すかというのがそのまま数字の目標につながるのである。
だから、最初は数値目標も必要である。
数値目標をあらかじめ設定するのは、誰が見てもわかりやすいし、第一数字と無関係に仕事をして会社がつぶれてしまってはおしまいである。
サラリーマンの場合、自分の給料で生活費を出さなければならないから、現実のことを考慮するのは当然である。
数字だけを追いかけるような、数字に対しての思い込みをする人もいるが、これも個で見るか全体で見るかで、立場が違ってくる。
個で見るのは自分の金儲けだけで考える。
全体で見るならば、お客さんに喜んでもらうことを考える。
喜んでもらうことを念頭に置いていれば、商品も当然よい物を取り扱うようになるから、商品を愛し、お客さんを愛し、会社を愛し、自分を愛し、自分の家族を愛し、全部愛することを常に考えるようになるはずである。
そのためにはまずはお客さんに喜んでいただくのが、最も豊かになる手っ取り早い方法である。
それが全体を見るということではないだろうか。
儲け主義に徹していれば、利潤追求のために無理が重なり、やがて従業員やお客さんにも嫌われ、経営の基盤があやしくなってくる。
エゴというのは個で、全体というのは愛なのである。
愛の仕事をするのが大事である。
深い観点から見ると、それがすべてなのである。
そういった深い観点から見られる心で仕事をしていれば、いずれ数字として結果が現れてくる。
自分を高めないで、自分の能力を出さないで、人を喜ばせないで金儲けに走れば、バブルになってしまう。
土地や株は金儲けするには最も手っとり早い。
人を雇わなくてもいいし、努力も要らない。値上げをじっと待つだけでいいのだから。
しかし、その反動がバブル経済の崩壊を招いた。
安易な金儲けだけに徹すれば、いずれ身の破滅を招く。
数字について考えたら、私の頭の中にこんな言葉がパッと浮かんだ。〔ほんとうの数字作りとは〕である。
私は、以前レストランチェーンを展開する会社の経営者として毎日生々しい実務に直面していたが、時おりこの言葉を思い出してビジネスの本質を心に刻み込むようにしていた。
以下、その言葉を紹介する。
〔ほんとうの数字作りとは〕
売り上げ、利益は過去の努力の結果としての数字
地域で一番行きたい店と思わせるのが、未来の数字
過去の数字は、事務所でも見られる
未来の数字を作るのは、現場でしかできない
過去の数字だけ見ていると、バブルになる
未来の数字を自らの力で変えるのが、本物の経営者、商人、それは不況に強い
過去の数字は、他人や社会のせいにできる
未来の数字は、すべて自分の責任
過去の数字だけを見ていると、求める心だけ起きる
未来の数字だけを見ると与える心だけ起きる
過去の数字だけ見ていると成長しない
未来の数字を変えようと思うと夢が膨らむ
過去の数字だけを見ていると、周りが変わるのを待っている
未来の数字だけを変えようと思うと、まず自分が変わる
過去の数字は反省の材料
未来の数字を変えるのは改善
過去の数字だけを見ると、人に対して傲慢か引け目になる
未来の数字を変えようと思うと、勉強、教育を大事にして、ほんとうの謙虚になる
過去の数字を変えようとすると、見えるものだけを大事にする
未来の数字を変えようとすると、見えるものだけでなく見えないものをもっと大事にする
過去の数字だけを見て話をすると、社員はさぼる
未来の数字を変える話をすると、喜んで働く
過去の数字は誰にも変えられない
未来の数字は人によって全て変わる
過去の数字だけを見ると、店は自分のものと思う
未来の数字を変えようと思うと、店はお客様のものと思える
過去の数字だけ見て反省しないと、思考が停止する
未来の数字を変えようと思うと、チャレンジ精神が湧く
過去の数字だけを見ると、人の欠点だけがよく見えて、批判に回る
未来の数字を変えようと思うと、感謝に変わり、すべてが好転する