人を肉体として捉える
病を患った人の心は、どのようなものでしょうか。
心配、恐怖、悲観、苦悩、憤り、時には絶望もあるでしょう。
そして、その家族にも、同じような思いが生じるでしょう。
治るだろうか、もう治らないのではないか、どうして自分だけ、ちっともよくならない……。
これは、病にかかった人でなければ分らない気持ちです。
ほとんどの医師は、患者さんのこのような心内を感じながら、日々、治療に当たっていることでしょう。
しかしながら、意外なことに、現代の医療には、心のリハビリと言いますか、心を回復する分野の専門はないのです。
肉体に病が表れると、診療所に行ってしかるべき処置をするわけですが、その時に、肉体には色々な検査をし治療をしていくのに、心の回復はケアされないわけです。
病に罹った時、特に、今まで元気にしていた人が突然倒れてしまって入院を余儀なくされてしまった場合、その人が失意のどん底にあることは予想されます。
どうして自分が……と、思うことでしょう。
昨日までとは打って変わり、自由にならない自分の体を抱えて、悲観することは容易に想像できます。
体の痛みと同時に心にも鋭い痛みを感じているわけです。
そうであるのに、現代の医療では、肉体を治すことに重点を置いて、心のことは置き去りにされています。