1746.過去を背負ってきた山本剛史さんは語る2/5

真我日記

写真は挽肉のオムあんかけご飯です。あんかけがうまく行きました。  
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佐藤先生の言葉をお伝えします。著書過去は自由に変えられるより
昨日からの続きです。
しかし、私が大学生になったとき、運命の計らいのように素敵な出会いが訪れました。

生まれて初めて、私のことを理解してくれる女性が現れたのです。

心を閉ざしていましたから、大学に入っても相変わらず周りから誤解を受け続けていました。

しかし、1年後輩の美里という女の子が、私のいないところで、私の味方をしてくれている、という話を人づてに聞きました。

「山本さんはそんなつもりじゃないと思うわ」

「山本さんって、きっと、こういうことが言いたかったんじゃないかしら」

そう言って、私の言動から生じた誤解を一生懸命、解いてくれているというのです。

それを聞いても、氷のように固く冷たくなっていた私の心が動くことはありませんでした。

でも、実際に彼女と会話をし、彼女の温かい心に、温かい笑顔に、温かい言葉に何度も接しているうちに、私の氷は徐々に溶かされていきました。

生まれて初めて、私は家族以外の人を信用することが出来ました。

そして、人を心から愛することを知ったのです。

彼女は、本当に優しい女性でした。

何時間でも私の話を聞いてくれ、私のことを理解してくれました。

このままじゃ駄目だと、自分の性格を変えようとしている私に、「そんなに焦らなくていいんじゃない?」

「そのままで、無理しなくていいんじゃない?」

「今の剛史さんが、私は大好き」

そう言って励ましてくれました。

生まれてから、ずっとつらいことばかりだと思っていた人生でした。

でも、彼女と出会って、過去のつらい出来事のすべてを忘れるくらいの幸せを感じました。

こんな私を「そのままでいい」と言ってくれる人。

私のことを「そのままのあなたが好き」と言ってくれる人。

今までに味わったこともないような、毎日が夢のような日々でした。

二人でたくさん話をしました。

自分の生い立ち。好きなこと。未来のこと。将来の夢。

時間が流れるのを忘れて、カフェで話しこみました。

小さなレストランでご飯をよく食べました。

二人で映画も観にいきました。

どこへ行くという目的もなく、ずっと散歩をしました。

話が尽きることはありません。

今までの味気ない日々が、彼女と二人でいると眩しいくらい輝く日々に変わりました。私は、この時間がずっと続くことを願いました。

そして、私と美里は、将来を誓い合うようになりました。

もう、ひとりぼっちではありません。これからは二人なのです。

二人で将来の暮らしを語り合い、幸せな生活の夢を語り合いました。

しかし、私が永遠に続くと信じていた幸福は、ある日、無残にも打ち砕かれてしまいました。運命とは、なんて残酷なのでしょう。

美里は、体調が優れず、ほんの少しのことで疲れるようになりました。

彼女の体調が悪いのに、一番そばにいた私は彼女といることに有頂天で、気づいてあげることも出来ませんでした。

彼女は、私に黙って一人で病院に行きました。

医師に告げられた病名は、白血病でした。

「まさか!……そんなバカなことが!」

私は衝撃を受けました。

その後、彼女は急遽、入院をしました。

どんどん症状が進み、間もなく病室から一歩も外に出られなくなってしまいました。

最初のうち私は、すぐに退院出来ると楽観的に思っていました。

だって、彼女はあんなに元気だったのです。

いつも私の横で笑っていたのですから……。

私は頭を抱えて、運命を嘆き、そして自責の念に駆られました。

自分は彼女と出会ったおかげでこれほど幸福になったというのに、彼女の体の異変に気づいてあげられなかった。

一番大切な相手を守ることもできていなかった……と。

優しい美里は、私に「あなたは何も悪くないわ」と逆に慰めてくれました。

でも、残酷な病魔は日を追うごとに彼女を蝕んでいきます。

私は毎日のように、病院へ足を運びました。

ベッドの中の美里はみるみるやせ細り、今にも消えそうになっていきました。

それから間もなく、美里は両親のいる実家近くの病院に転院していきました。

私は、片道4時間の電車に乗って、会いに行きました。

でも、彼女の両親は、私を病室に入れてくれませんでした。

彼女の両親は、私を恨んでいたのです。

お母さんがある宗教を信仰していて、その団体で霊力があると言われている人に、美里のことを見てもらったそうです。

霊能力者は、私が美里に不幸をもたらしている、だから私といると彼女がどんどん不幸になる、と言ったらしいのです。

彼女の両親はすっかりそれを信じ、娘に私を絶対近づけないようにしたのです。

それでも、私は彼女に会いたい一心です。会わせてもらえないことを承知で、何度も何度も、時間をかけて彼女のもとに通い続けました。

美里に何が出来るだろう。

どうしたら、美里が元気になるだろう。

そればかりを考えていました。

あんなに私を理解してくれて、勇気づけてくれた美里が、弱っている。

あれほどたくさんの愛を私は受け取ったというのに、これまでの私は「くれ、くれ」とか「欲しい、欲しい」ばかりだった。「もっともっと」と、自分が受け取ることばかりを考えていた。

美里が病気になって、初めて気づいた。

これからは、私のほうからいっぱい美里に返す番なのだ、と。

美里の好きなところに連れて行ってあげよう。

欲しいものを買ってあげよう。

美里の叶えたい夢に協力しよう。

美里と結婚して、幸せにしてあげよう。

そして、絶対に二人の子供を作ろう……。

そんな思いで、美里の病院まで往復8時間の道を通いました。