佐藤康行の言葉をお伝えします。著者成功と幸福を呼ぶ言葉より
私はレストランを持つための資金稼ぎの手段と、自己を高めるという二つの目的のために、化粧品から宝石のセールスになりました。
宝石のセールスを始めて間もない頃は、二~五万円の見栄えのしない安い商品を持たされました。
お客様に売り込みに行くまではよいのですが、ケースを開くと「なあに?これが宝石なの」とばかにされるので、ケースを開くのがいやでした。
宝石のケースを開かなければ売れないのに、そのケースを開くのがいやなのです。
ところが、このみすぼらしい品揃えが、後日、大きな武器になったのです。
ある地方の美容院に売込みに行った時のことです。
私が訪ねていくと、その美容院の先生は「宝石屋さんはたくさん来るから結構よ」とつっけんどんに断られました。
私は「東京からわざわざ来たので、五分くらいでも結構です。目の保養をしてください」と強引に頼むと、その先生はめんどうくさそうに「それじゃあ、見るだけよ」と近づいて来て、それにつられるように他の何人かが近づいてきました。
私は内心困りました。今までいろいろな宝石のセールスが来ているということですが、私のケースの中には、とてもそのライバルに立ち向かえる商品など入っていないのです。
しかし、三人くらいの見込客が目の前にいます。どうしよう、宝石を見せればきっとがっかりされるだろうと思いました。
ところが、人間は追い詰められると意外な言葉が出てくるものです。まさに、この時の私がそうでした。
宝石のケースを開けながら、私はとっさに、
「いゃー、まいった、まいった。今日は売れて売れてたいへんでしたよ。
おかげさまで今日はもう、これしか残っていません。」
と大きな声で叫んでいたのです。
半分やけくそでした。
自分自身でも思いがけない言葉が出てきたのです。
私のあまりにも大きな声と迫力に、美容院のお客様が、エプロンを首にかけたまま椅子から飛び下りるように見に来たのです。
全員集まってきました。
私は、
「でも安心してください。会社に帰れば、素晴らしい商品が山ほどあります。
ご注文はカタログでいくらでも受けられます」
と、入り口前面にカタログ、契約書を広げて一生懸命、全知全能をかけて、死に物狂いでセールスしました。
結局、私の情熱、熱意、迫力に引き込まれるようにして、その場で七人に売れてしまったのです。
私はこの体験から大変なことを学びました。
人生の哲学を学んだのです。
私たちはよく状況が有利だとか不利だとか言いますが、状況には有利だとか不利だとかはないのです。
自分の置かれている現状を不利だと思う心が不利にさせているのです。
自分の受け止め方、捉え方なのです。
人間は生まれた時に、裕福な家に生まれたとか、貧乏な家に生まれたとか、あるいは身体の一部に障害を持って生まれたとしても、それは不平等ではないのです。
不平等だと思って、そこから出発するから不平等になってしまうのです。
大切なことは、常に現状を出発点として、そこからどうしていくのかということを考えることなのです。
現状を最高だと思えば、思った時から最高になるのです。
現状を最悪だと思えば、最悪になるのです。
自分の置かれている現状が問題ではなく、自分の思いが問題なのです。
同じ状態でも、心構えしだいで最高の状態となるのです。
その心構えとは、どんな状態でもありのまま感謝するということです。
感謝すればその時から最高になるのです。