佐藤先生の言葉をお伝えします。著者幸せな結婚の法則より
結婚してちょうど1年目を迎える山城和也さん・菜月さん夫妻。
新婚さんらしい初々しさと同時に、円熟したような落ち着きも感じられるカップルです。
私の印象では、結婚する前の二人はそれぞれの心に強烈なトラウマがあり、とても異性を受け入れられる状態ではありませんでした。
ふつうなら結婚が難しいタイプの人たちだったのです。
幼少のころの和也さんは小児ぜんそくを患い、夜になるとよく発作を起こしました。
それでも和也さんが病院へ行くことを嫌がるので、母親が家で看病をしていると、帰宅した父親に「なぜ病院へ連れていかなかったか!?」と母親はひどく責められたそうです。
また、生まれつき片目の視力がなかった和也さんが「なぜ僕は目が見えないの?」と無邪気に母親へたずねたところ、「ちゃんとした体に生んであげられなくてごめんね」という気持ちから悲しい顔をされたという記憶があります。
それらの体験によって、自分の気持ちを正直に伝えると大切な人を傷つけてしまうという怖れが生まれ、いつしか人に心を閉ざすようになったのです。
そんな和也さんにはじめて恋人ができたのは、大学生のころでした。
いつも自分に寄り添ってくれる彼女の存在が、人と接することを怖れていた和也さんの心を少しずつ溶かし、二人は将来を誓い合うまでになりました。
ところが、幸せな日々は長く続きませんでした。
つき合って数年後、和也さんが25歳のときに彼女は白血病を患ってこの世を去ってしまったのです。
病床での「私のことを忘れないでね」という言葉が最後となりました。
「彼女の病にもっと早く気づいていれば……と悔やみ、自分が殺してしまったようなものだという罪の意識にさいなまれました。
せめてもの償いとして、一生彼女のことを忘れないと心に誓い、悲しみを紛らわすかのように十数年間ただただ仕事に没頭してきたのです」