佐藤康行の体験したお話をお伝えします。
「佐藤さん、もう一度考え直した方がいいんじゃないですか?」
A氏は、私の顔をのぞきこむようにこういいました。
私はそのとき、創業以来二十年間経営をしてきたステーキレストラン・チェーン(70店舗あった)の経営権を、A氏に譲渡する契約の場にいました。
私は思わず、「ちょっと待ってください」といって、トイレに駆け込みました。
この場にのぞむ前までは、自分が創業した会社を手放すことに対する迷いも未練もなくなっていました。
ところがいざ契約書をかわす直前に、A氏からいわれたこのひと言に対して、さすがに即答することができませんでした。
私は狭く薄暗いトイレのなかで大きく深呼吸しました。(佐藤康行、お前は本当に決意をしたんだな。もう迷いはないな。たとえ将来、一文無しになっても悔いることはないな?)
まさにこの瞬間、私は本当に生まれ変わったのです。
店舗拡大、利益追求に東奔西走してきたいままでの実業家としての生き方と、築き上げてきた多くの店舗を完全に手放したのです。
そして、人々が本当の自分を自覚し、自分自身の使命を体得していただくために、残りの人生のすべてを賭けようと決断したのです。
これからの時代を生きていく上で、すべての人々にとって最も大切なことは、己、つまり、本当の自分を知ることであり、それを手助けしていくことこそが私自身の使命であると確信したのです。
契約を終え、事務室のビルを出た瞬間、見計らったように携帯電話が三本続けて鳴りました。
驚いたことにその全部が、実業家としての私にではなく、生まれ変わった佐藤康行への講演の依頼だったのです。
それからの私は、すべての時間とエネルギーを人が「生まれ変わる」ために費やしています。
この一点のためだけに全精力を傾けています。
では「生まれ変わる」とはどういうことでしょうか。
それは「本音で生きる」ということなのです。
自分の本音に従って人と話したり行動したりするということなのです。
このようにいうと、みなさんからは「とてもじゃないがいちいち本音を話していたら、会社のなかで生き残っていけませんよ! 世のなかそんなに甘くないですよ!」という反論が聞こえてきそうです。
みなさんは会社で上司にペコペコして、当りさわりのない会話をするのが「建て前」で、帰りに焼き鳥屋で会社や上司への愚痴や不満、悪口をいうことを「本音」と呼んでいます。
それが「本音」ならば、確かにみなさんは「本音」を話すことで、会社を辞めることになるか、トラブルをひき起して左遷されることになるでしょう。
では、はたして本当にそれが「本音」なのでしょうか?
じつは、それは「本音」ではないのです。
私がいっている「本音」とはさらにその奥に潜んでいるのです。
なぜ人間が愚痴や不満をこぼしたり、怨んだり、嫉妬をするのかというと、それは、上司に認めてもらいたい、わかって欲しい、みんなから愛されたい、そういう気持ちが心の奥にあるからなのです。
そんな気持ちがあるからこそ、認められない、わかってもらえない、愛されないときに、愚痴や不満や怨みや嫉妬という形になって現われてくるのです。
つまり、私たち一人一人は全員、心の奥深いところ、まさに本音のところで愛を求めているのです。
愛こそが本当の「本音」なのです。
私が「本音で生きる」といっているのは、心の一番奥にしまってある愛を心の扉のなかから取り出して、そしてそこを原点にして生きていく、ということなのです。
その観点からすべてのものを観ていくと、いままでとは観方がまったく異なってくるのです。
あなたの会社のこと、仕事のこと、奥さんや子供のこと、また社会や世のなかのこと、将来のこと、すべてがいままでとは全然違って観えてくるのです。
二十世紀は終り、二十一世紀に入ってていますが、わが国ではいま、未曾有の不況により全国民が先行き不安な状況におかれています。
また、仕事をしていても人生の本当の充実感や喜びが見い出せず、空しい日々を漫然と過ごしているビジネスマンがとても多いのです。
さらには新種の病気や凶悪犯罪、子供の暴力なども深刻な問題です。
地球の環境破壊の問題にしても決して他人事ではなくなってきています。
こういった現代の抱える問題は、すべて私たちが自分だけの利益やエゴを追求した結果生じたものなのです。
それはいいかえれば、自分たちだけに都合のいい論理、理屈を優先させた結果であり、これまでに得た知識をもとに、頭で考えた結果でもあるのです。
だが、現状はどうでしょう。
問題を解決する方向はいっこうに見えていません。
そして、そのように頭のなかの知識だけで考えたやり方では、私たちが幸せになり、心から豊かな社会を作ることは永遠にできないということを、歴史がいま、教えてくれています。
私たちは、知識偏重のやり方、頭で考えるのではなく、人間の心の一番奥にある本音の愛からすべてを観る生き方が必要なのです。
私はこのことを著作やセミナーをとおして多くの人たちに伝えています。
そのことによって多くの方が劇的に「生まれ変わる」瞬間を見てきました。
人は誰でもいままでの自分から脱皮し、生まれ変わることができるのです。
このブログでは、人間が本音の愛からすべてを観るようになったとき、人生や仕事がどのように変化していくのかを数多くの実例を踏まえて書き記してあります。
そこには、仕事に対する取り組み方や人間関係などにおいて、いままで想像もできなかったような変化が実際に数多く起こっています。
あなたのなかにも、必ず本音の愛があります。
その気にさえなれば、そこから物事の本質が観え、そこから出る行動というのがあるのです。
そうなると、いままでのあなたと百八十度違う人生が送れるのです。
まさにいま生まれ変われるのです。
そして一刻も早くそのことに気づいて、これからの人生を本音を大切にして、心豊かに悔いのない生き方を、愛と喜びにあふれた人生を送って欲しいのです。
あなたがこのブログを読んで本当に生まれ変わることを心より願っています。