佐藤先生の言葉をお伝えします。著者「悩み解決明快答」より
「ああ、佐藤先生、もうとにかく何とかしてください。苦しくてツラくてしかたがないんです」
そうやって、私に悩みの相談に来る方のなかに、
「ところで、何を悩んでいるのですか?」と質問すると、
「え~と、そういえば、何を悩んでいるんだっけ?」
と、悩みの中身を即答できない方がよくいらっしゃいます。
悩んでいる人の中には、たくさんの悩みが、糸がからまるようになって収拾がつかなくなり、そのことでさらに混乱しているという場合が少なくないのです。
私たちはしばしば、ひとつの悩みを抱えると、その悩みから出発して、頭の中で、いろいろと、妄想を膨らませてしまう。
「こうなったら、ああいわれるだろうなぁ」
「ああいわれたら、こうなっちゃうかなぁ」
「こうなっちゃったら、さらにああなるだろうなあ」
なんて、まだ起きてもいないことに絶え間なく思いをめぐらせる。
そうやって、心の中で、悩みをどんどん大きくしてしまいがちなのです。
そして、そのような心の状態だから、ささいな出来事がさらなる悩みの種となり、それらが複雑にからまりあう。
すると悩んでいる心の重さがまた悩みになってしまったりするのです。
あなたも思い当たるふしがあるのではないでしょうか。
さあ、こんがらがった悩みをスパッと解決する特効薬はこれです!
あなたの悩みのもととなっている問題を一度、おちついて整理してみましょう。
問題を整理するだなんて単純で当たり前のことのように聞こえるかもしれません。
しかし、これは非常に重要で、なおかつものすごく効果の高い特効薬なのです。
しっかりと明確化された問題は、半分解決された問題であると言われます。つまり、問題を明確化することが、問題を解決する近道なのです。
例えば、「心」をあなたの部屋だとします。
部屋がひどく散らかって汚れています。つまり、悩んでいる状態です。
そして、あまりの汚さにあなたは困っている。これは、悩みに悩んでいる状態です。
そこで、とりあえずこの部屋を整理してみます。
すると、その部屋を整理しだした時から、悩みはもう消え始めます。
とりあえず、「悩みがある」という悩みは消えるのです。
手順を踏んで整理していけば、悩みの一部はもう悩みでなくなってしまいます。
例えば、あなたも、誰かに対してむしょうに腹が立って、いてもたってもいられない、という状態があるでしょう。
では、その怒りの気持ちを、整理してみましょう。
まず、そんな時には、「相手の何に腹をたてているのか」書き出して見てください。
何に腹をたてているのか、相手の問題を書いて整理するのです。
そのひとの全部に腹が立っているのでしょうか。
もしこれが夫婦だったら、相手のすべてが嫌いなら、離婚しかない。
でも、「良いところ」も、きっとあるはずです。
それも書いてみてください。
あわせて「自分自身の問題」も書いてみるといいでしょう。
腹を立てて頭の中で思いつめていると、それが妄想になってきます。
すると、どんなささいな小さなことでも、雪だるま式に膨らんでくるのです。
妄想だけ膨らませて何もしないと、しまいには人格まで嫌いになってしまいます。
でも実際に悩みを紙に書いて見ると、その悩みがたいしたことではないことに気づき、結果的に悩みが消えていくこともあります。
頭で考えることは放っておくと膨らみますが、紙に書いた瞬間に悩みは整理できるのです。
例えば「相手のご飯の食べ方が気にいらない」とします。でも、それを頭の中だけで嫌だ嫌だと思っていると、そのうち全部嫌いになってしまう。
これを書いてみることで、意外と他にはこれといって嫌なところは無かったりします。
「ああ、ご飯の食べ方だけじゃないか。たいしたことなかった」と整理されるのです。
紙に悩みを書くと、悩みをある程度客観的に見ることができます。
悩みは、悩んでいる人にとっての問題です。つまり、結局悩む当人にしか本当のところはわからない。だから悩みを他人と比較することはできませんし、悩みを測る一定の基準は存在しません。
ですから、同じような出来事に遭遇しても、たいへん大きな悩みとしてとらえる人もいれば、全く悩みとは感じない人もいます。
だからこそ、紙に書くことによって、悩みを客観化することが重要になります。
悩みは、どこまでいっても悩んでいるひと個人の問題です。だから、悩みは、放っておくと、心の中でどんどん膨らみます。
巨大風船のようにムクムクと膨らみ続けてしまうのです。そして、まるで現実とはかけ離れた妄想や幻覚の世界に入り込んでしまいがちです。
悩みを紙に書いて整理すれば、妄想でパンパンに膨らんだ悩みから、中に充満しているガスが一瞬でシューと抜けます。
すると、とてつもなく大きく見えた悩みが、ずっと小さくてコンパクトであることに気づきます。
それと同時に、悩みに振り回されているときには気づかなかったものにも目がゆきます。
たとえば、相手の良いところや自分の問題点などです。
ここまでくれば、あなたの悩みは、とても扱いやすいものになっているでしょう。