佐藤康行の言葉をお伝えします。
不況といわれる現在の日本にあって、とりわけ斜陽産業といわれている業界では、中小企業は軒並み倒産の危機にさらされています。
私は、そういった会社の経営者に相談をもちかけられることも多くあります。
普通の経営コンサルタントならば、何とか会社を持ち直させるための指導をするのですが、私は、ときには逆に、会社をつぶす手助けをします。
というのは、この先倒産への道をたどるだろう、ということが確実にわかれば、傷口が少ないうちに閉めたほうがいいからです。
経営者からすれば、自分が汗水流して育ててきた会社は、自分の子供のようなものですから、それを守ろうとするのは当然です。
そして、状況がどんなに悪くても、かつてのような栄光と繁栄がまた必ずくると信じたいものです。
その気持ちは痛いほどわかります。
知っておいていただきたいのは、会社には一秒たりとも現状維持はない、ということです。
つまり、繁栄の方向に向かっているか、衰退の方向に向かっているか、その二つに一つなのです。
いま、このまま行ったらどうなるか?
冷静に考えれば先は明確に見えてくるものです。
もし、衰退の方向に向かっていて、社会の流れにもそむいているのならば、もう再建は無理です。
一刻も早く整理したほうがいいのです。
そして、社会全体が求めているものに対応できるように再構築するか、いったんきれいにすべてを捨てることです。
私たち、特に経営者は、会社はそもそも何のために存在しているのかを、改めて考えてみる必要があります。
それは本来、社会や多くのお客さんに喜んでもらって役に立つためにあるのです。
それが、社会から「もういらないよ」といわれているのに、なぜ自分たちのためだけに、悪あがきをしているのでしょうか?
「社員の生活を守るためだよ」というのは、言い訳に過ぎません。
その会社が倒産したって、どこか他のところでちゃんとやっていくものです。
むしろ、世のなかから必要ではなくなった会社に、いつまでも置いておくほうが、よほど社員にとってはマイナスです。
早く他に移ってもらったほうがお互いのためなのです。