私たちは人を嫌いだとか苦手だとかで判断しますが、それはじつは心の浅い面でしか見ていません。
本当に心の深い所を見ていくと、すべての人を好きになれるのです。
三十三歳のA・Kさんはあるとき、コピー機のセールスのために私の事務所に飛び込んできました。
たまたまコピー機を買い替えようと思っていたので、購入契約をすることにしました。
その際の彼は、最近セールスの実績が伸びずに悩んでいる、これ以上伸ばすには限界を感じているといった様子でした。
それでも精一杯の努力もしているようでした。
私は彼が一生懸命にセールスに歩き、会社で教わったセールストークや資料を使いこなして流暢にセールスをしているのがよくわかりました。
しかし、それだけではいくら勉強してもいま以上にはならないことを伝えました。
そして自分自身の心の奥にある本当の自分自身を探るようにアドバイスしました。
そのときはキョトンとしていた彼も、その後その言葉の意味を体感することができるようになりました。
翌月、事務所を訪ねてきた彼は、すっかり明るい雰囲気に変わっていました。
「佐藤さん、不思議なんですよ。
以前と別に違う仕事の仕方をしているわけではないのに、あれからお客さんの方から、わざわざ電話をもらったり、放っておいてもどんどん契約がとれるようになってきたんですよ。
一体どうしてだか自分でもわからないんです」それまでの月に四、五台が、何と十八台も契約し全社一だというのです。
私は「Aさん、いやな人がいなくなったんじゃない?」と聞いてみました。
「あーっ、それは変わりました!」彼はお客さんに電話をするとき、以前はこの人は後回し、この人は無理だからやめよう、と自分で勝手に決めこんで選んでいたのが、いまでは、リストの上から順番に一人一人電話をできるようになっていたのです。
そればかりか街を歩いていてすれ違う人たちすら、みんないい人に見えてきたといいます。
いやな人などいなくなってしまったのです。
行く先行く先みんなが歓迎してくれるに違いない、と思えてならないのです。
彼は現在営業本部で人を指導する立場について活躍しています。
彼の場合はいままでの戦略を練ろう、技術を使いこなそう、という頭のエネルギーから、人を愛する魂のエネルギーへと変換したということなのです。
人を心から愛すことができれば、人相も変わり、人からも好かれ、当然仕事も順調に発展する以外にないのです。